インスタント沼

  • 監督:三木聡
  • 脚本:三木聡
  • 出演:麻生久美子、風間杜夫、加瀬亮
  • 上映時間:120分
  • 製作:2009年日本

Photo_2 担当していた雑誌が廃刊になり、恋人にもフラレたOL沈丁花ハナメ(麻生久美子)は雑誌社を退職することにした。何事もうまく行かず落ち込んでいた時、病気で意識不明になった母(松坂慶子)の手紙を偶々見て、実の父らしき人が生存していることを知り、父親探しを始める。やっとのことで探しだし、会ってみるとその男(風間杜夫)は奇妙な風体で”電球”と呼ばれている骨董屋であった。ハナメはそのうち”電球”を手伝うようになる。骨董屋に出入りしている”ガス”と呼ばれる電気工事屋(加瀬亮)もハナメをそれとなく支援する。ハナメは次第に骨董に興味を抱くようになり生活のハリが出てきたのであったが・・・。

うまくいかない現状に落ち込んでいる人は多いし、過去の何かにこだわりを持っている人も多い。ハナメは失業、失恋に落ち込んでいるし、子供時代に見た”沼”に何故かこだわりがある。少女時代の占いにこだわる人物もこの映画に登場する。過去のこだわり、うまくいかない現実、そしてかすかに明るさが見える未来。そんな過去・現在・未来の時間軸がこの映画ではうまく描かれていると感じた。

三木聡監督独特の小ネタが散りばめられており、この映画も三木ワールドを形成しているが、映画のストーリー自体が奇妙でかつ笑えるので、小ネタの笑いが多少邪魔になった感じがしないでもない。多少難ありも総じては良い映画であるといえる。

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スタートレック

  • 監督:J・J・エイブラムス
  • 出演:クリス・パイン、ザカリー・クイント
  • 上映時間:126分
  • 製作:2009年アメリカ

Photo 4月中旬に、家族が入院し病院通いや様々な書類申請手続きや家の改修工事などで心身ともに疲れ果て、しばらくは好きな映画も殆ど観れなかった。とはいえ、5月には「グラン・トリノ」「ミルク」の2本はしっかりと見たのだが、ブログ投稿の気力がなく、しばらくお休みしてしまった。

6月になってやっと気力が回復、さっそく観たのが当作品である。とにかく楽しい映画が観たかったのだ。

スタートレックは、1966年に始まったTV人気番組であるが、私はTVシリーズは観ていない。1979年に映画版シリーズ第1作が作られ、以来10作が製作されている。このうち何作かはTV映画番組で観ている。宇宙船エンタープライズ号の艦長はじめとするクルーが悪戦苦闘のうえ敵の艦隊をやっつける姿はいつも実に痛快であった。

今回の作品はTVシリーズの最初に戻り、カーク艦長の青年時代(当然艦長になる前)を描いている。無軌道な生活ぶりから艦隊に参加する経緯、バルカン星人と地球人との混血スポックとの対立、持ち前の勇気とクルーやスポットの協力を得て敵艦隊を打ち破るストーリーは想定どおりであるにしても充分に楽しめた。映画鑑賞復帰第1作としては申し分なしであった。      2009/6/13 @新宿バルト9

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フィッシュストーリー

  • 監督:中村義洋
  • 脚本:林民夫
  • 原作:井坂幸太郎『フィッシュストーリ-』
  • 出演:伊藤敦史、高良健吾、濱田岳、多部未華子、森山未来
  • 上映時間:112分
  • 製作:2009年日本

Photo_6 2012年、5時間後に彗星が衝突するというるかもしれない地球で、通常通り営業している1軒のレコード店からは37年前に解散したロックバンド”逆鱗”の曲「フィッシュストーリー」が流れていた。そんな状況から物語りは始まる。

約40年という時間軸の中で、何ら関係がないと思われるような4つのエピソードが語られるが、2012年の地球滅亡を目前にして、それらのエピソードの繋りが見えてくるのだ。これは原作者井坂幸太郎氏の得意技である。

主軸に流れるのはフィッシュストーリーという曲であるが、この曲をレコーディングする時の様子、曲ができたいきさつの話は面白い。「正義の味方」が活躍する話しも面白い。

俳優人では、”逆鱗”の歌手役高良健吾画が魅力的不だった。正義の味方、森山未来のいつもの無表情な表情も良い。その他、濱田岳・大森南朋・伊藤敦史等、芸達者な俳優が映画を引き締めていた。

中村監督が井坂幸太郎作品を映画化したのは「アヒルと鴨のコインロッカー」に続いて2作目。前作は、切なく爽やかなでトリッキーな青春ミステリー映画としてなかなかの秀作であった。当作品も、荒唐無稽な面があるにしても、あり得る話を時間、空間を隔てて一つにまとまっていく点に面白さを感じるが、心に響くメッセージの質量という点で、前作に比べ物足りなさを感じた。

2009/4/4 @シネクイント

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フロスト×ニクソン

  • 監督:ロン・ハワード
  • 脚本:ピーター・モーガン
  • 出演:マイケル・シーン、フランク・ランジェラ
  • 上映時間:122分
  • 製作:2008年アメリカ

Photo_5 2008年度アカデミー賞の5部門(作品・監督・主演男優・脚色・編集)にノミネートされた作品。

英国のTVトーク番組人気司会者のデビット・フロストは元米国大統領リチャード・ニクソンとの6時間に亘る単独インタビューを敢行した。このインタビューは1977年に放映され全米で話題を呼んだ。本作品は、インタビュー企画・実施の舞台裏で繰り広げられた熾烈な駆け引きと緊迫のトーク・バトルの模様をスリリングに描き出した実録ドラマである。

この映画を観ると、インタビューというものが、する側もされる側も周到な準備を行ったうえでのまさに自分の将来を賭けた戦いであることが分かる。米英ではトーク、スピーチ能力がその人の地位を決めるほどのスキルなのであろう。

周知の通り、リチャード・ニクソン大統領は、ウォーターゲート事件で任期中に大統領辞任を余儀なくされた。1974年のことである。その3年後のインタビューであるが、彼は政界復帰をもくろんでいおり、このインタビューを契機にと考えていたようだ。一方、司会者のデビッド・フロスト氏は米国TV界への進出を狙って、元大統領とのインタビューを企画したようだ。ニクソンがウォーターゲート事件をはじめ、その他の疑惑について口を閉ざしていたので、何らかの言質をとるように策を練っていたのだ。老獪な政治家とどちらかというと軽いイメージの司会者(映画ではことさら軽さを強調したそうである)のバトル、当初は当然のことながら、老獪さが有利な状況となるのだが、思わぬ最終章を迎えるのである。ここにいたる展開は実に見ごたえのあるものである。そして見終わったあと、最初は憎憎しかったニクソン氏(洒落ではない!)も愛らしい老人に思えてくるのが不思議であった。

2009/3/30 @TOHOシネマズシャンテ

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ワルキューレ

  • 監督:ブライアン・シンガー
  • 脚本:クリストファー・マッカリー他
  • 出演:トム・クルーズ、ケネス・プラナー、ビル・ナイ
  • 上映時間:120分
  • 製作:2008年アメリカ/ドイツ

Photo_4 ヒトラー暗殺計画が、彼が政権を取ってから43回もあったとは知らなかった。この映画の暗殺計画はその中でも最大規模のものだったらしい。「ワルキューレ作戦」とは国内で反乱が起きた際に、全ての武装集団を予備軍の指揮下に置き、戒厳令を布告して政府の全官庁、党機関、交通・通信手段、放送局および軍法会議まで全て掌握する計画のことであるとのこと。過去何回かワルキューレ作戦が発動されかけたことがあったらしいが、いずれも不発に終わっている。今回はあと一歩のところで作戦は頓挫した。

当作戦の首謀者はシュタウベンブルグ少佐(トム・クルーズ)であった。綿密な計画のもと作戦は開始されたのであるが、頓挫した理由のただ一点は独裁者ヒトラーが死亡しなかったこと。

カリスマ的支配下の組織においてはカリスマの存在が絶対的である。カリスマが死んだときにはその組織力は一気に崩壊に向かうのだろうが、カリスマが生きていれば、その呪縛から逃れられない人びと(帰依者)が大勢いるということである。

映画は緊張感溢れる展開で、サスペンスドラマとして楽しめるのであるが、実際に起きた事件で、かつ失敗に終わったことを知っているので、何故失敗したかを確かめるような見方になってしまった。そしてカリスマ的支配の恐ろしさを改めて感じた。

2009/3/28 渋東シネタワー

 

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シリアの花嫁

  • 監督:エラン・リクリス
  • 脚本:エラン・リクリス、スハ・アラフ
  • 出演:ヒアム・アッバス、クララ・フーリ、マクラム・フーリ
  • 上映時間:97分
  • 製作:2004年イスラエル/フランス/ドイツ

Photo ゴラン高原にある小さな村マジュダルサムスはもともとシリア領であったが、今はイスラエルが占領している。イスラエル国籍を得る権利はあるものの、多くの村民はシリアへの帰属意識が強く無国籍者として暮している。村娘のモナは親戚筋に当たるシリアの有名俳優タレルとの結婚式を挙げるためウェディングドレスを着て花婿が迎える国境に来ている。一度国境を越えると二度と村には戻れない悲しみを抱えつつ、意を決して国境を越えようするのだが、書類の記述をめぐって両国の食い違いがあり国境超えの許可がなかなか下りないのであった。

これから嫁ぐ娘の期待や不安、父母の喜び、娘が家を出ることの寂しさ、不安などはどの国であろうと抱く心情であろう。しかし、この映画のような特殊な地域に暮らす人にとっては普通の何倍も心が揺れであろう。対立する国家の間では簡単にコミュニケーションはとれないし。一度国境を越えると二度とこの地に戻れないのだ。

民族・宗教などの違い、国家の対立は人間の基本的な権利を阻害する。阻害は国家権力によってなされることもあるが、個人レベルでも、違う価値観を認めず受け入れない人びとによって生じるのである。

この映画は、上述のような非常に重いテーマを背景にしているのであるが、思想的あるいは政治的な視点ではなく、ごく普通の市民の目線で、暮らしの一端の延長として、結婚間際の家族を暖かい目で描いている。彼らの喫緊の望みは、ただ娘が軍事境界線を越えて花婿のところに無事行くことなのだ。そんな単純なことさえなかなか実現(解決)できないことに登場人物はイライラし、この映画の観客もイライラと怒りを覚える。そのことが紛争続きの中東問題ばかりでなく、異なる価値観を尊重しあうことのない人間の愚かさを痛感させるのである。穏かな筋書きの裏に痛切な風刺を感じさせる映画であった。

2009/3/27 @岩波ホール

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ダウト ~あるカトリック学校で~

  • 監督:ジョン・パトリック・シャンリー
  • 脚本:ジョン・パトリック・シャンリー
  • 出演:メリル・ストリープ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス
  • 上映時間:105分
  • 製作:2008年アメリカ

Photo 2005年度のトニー賞、ピューリッツ賞を同時受賞した舞台劇「ダウト 疑いをめぐる寓話」の原作者ジョン・パトリック・シャンリーが今度は自らメガホンを握り映画を作製した。それが本作品である。主演はメリル・ストリープ、フィリップ・シーモア・ホフマン、共演にエイミー・アダムスと豪華キャストである。

1960年代のカトリック系学校を舞台に、神父と児童との関係への強い疑惑を募らせていく女性校長の姿を描いている。

先ず、校長役メリル・ストリープの迫力ある演技に圧倒される。神学校生徒に対し、厳格にルールを守らせる非情さ、神父への疑惑を徹底的に追及しようとする強い意志、そして神に仕える身ながら疑惑を持ち神父を追い詰めていくことへの罪の意識、そんな厳粛で強くかつ悩める姿を実に鮮やかに演じている。メリル・ストリープが本当に凄い女優であることを再確認した。フィリップ・シーモア・ホフマンも上手いし、エイミー・アダムスの純情無垢なシスターの姿にも魅力的であった。

古い価値観に厳格な校長と新しい風を持ち込もうと主張する神父との戦い、疑惑が真実かどうかの追求、純情であるが故にどちらかを決めかねる可憐なシスターの描き方は、1960年代の揺れ動くアメリカの姿、虚実に揺れ動く人間の姿を象徴しているように思われる。また、ラストの校長の独白は、神の許に、完全無欠な人間などいる筈はなく、誰しも疑惑、すなわつ人間不信惑を持たれてしかるべき存在なのだと指摘しているように思えた。この映画は心理サスペンスであると同時に人間の闇の部分をさりげなく描いているのだと感じた。

2009/3/21 @ル・シネマ

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オーストラリア

  • 監督:バズ・ラーマン
  • 脚本:バズ・ラーマン他
  • 出演:ニコール・キッドマン、ヒュー・ジャックマン
  • 上映時間:165分
  • 製作:2008年オーストラリア

Photo 第二次大戦直前のオーストラリアへやってきた気位の高い英国貴婦人(ニコール・キッドマン)が、野生味豊かな牛追い(ヒュー・ジャックマン)の助けを得ながら、様々な難関を乗り越えて、夫所有の広大な領地を守り、1500頭の牛を港まで運ぶというお話し。当然ながら牛追い男との運命的な恋、原住民アボリジニの子供への愛などの話しが加わる。

広大なオーストラリアの自然の美しさ、1500頭もの牛が暴走する迫力、ニコール・キッドマンの美貌、気位の高い貴婦人から苦難を乗り越えて強い女性へ成長していくプロセスの面白さ、恋の行方の興味などで165分を飽きることなく鑑賞できた。言うならば、昔の良質の西部劇を観ているような感じであった。

2009/3/17 @渋東シネタワー

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花の生涯~梅蘭芳~

  • 監督:チェン・カイコー
  • 脚本:ゲリン・ヤン
  • 出演:レオン・ライ、チャン・ツィイー、スン・ホンレイ
  • 上映時間:147分
  • 製作:2008年中国

Photo 京劇女形の名優である梅蘭芳(メイランファン)の伝記ドラマである。時代は1920、30年代の激動期、中国は蒋介石の国民党が軍閥跋扈の中国を統一しようとしていた時期であり、一方、中国侵攻を狙う日本軍がまず満州を治め、そこを拠点に北進を謀っていた時期でもある。

そんな時代でも北京では京劇の華やかな舞台は民衆の娯楽として盛んであった。京劇一家の3男として生まれた梅蘭芳(レオン・ライ)は女形のスターに成長していくが、京劇界が旧態依然の伝統に縛られすぎていることに疑問を抱いていた。そんな折、京劇改革を説く人物チウ氏(スン・ホンレイ)の口演を聴いた梅蘭芳は、彼の主張に感銘を受け、改革を実践していくのであった。京劇での地位を確立し、結婚して家庭も築いていた梅蘭芳は、ある日、京劇男形女優である孟小冬(チャン・イーモウ)に出会い、彼女に惹かれて行く。頻繁に密会する彼らを周りは心配するのだが・・・。折りしも、時代は、日本軍の北京侵攻が始まった。

この映画は確かに梅蘭芳の伝記ではあるが、それに留まらず、京劇界の新旧対立、それを巡る人たちの人物像、戦争の歴史的な背景などが克明かつドラマチックに描かれている。単なる個人の伝記ドラマを超えた興味を引くストーリーが語られている。147分の長丁場を飽きさせない娯楽映画の秀作でもあった。

2009/3/16 @新宿ピカデリー

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ホノカアボーイ

  • 監督:真田敦
  • 脚本:高崎卓馬
  • 原作:吉田玲雄『ホノカアボーイ』
  • 出演:岡田将生、倍賞千恵子、松坂慶子
  • 上映時間:111分
  • 製作:2008年日本

Photo 原作者吉田玲雄氏がハワイ島ホノカアで体験したことを綴ったエッセイを基に、CM作家高崎卓馬氏の脚本・プロデユースにより映画化したもの。

美しい自然に囲まれ緩やかに時間が流れるハワイ島の田舎町、そこでのんびり暮らす人たちと日本人青年レオとの出会い、生活、恋をゆったりと描いている。

景色は美しいし、ちょっと変わったオバサン(倍賞千恵子)が作る料理は美味しそう。松坂慶子、喜味こいし演じるオネエさん、オジイさんも味があった。映画を観ているものにとっては、飽きることはないものの、「ただ、それだけ」って感じである。ただし、レオ青年がそこで何かを学んだことは間違いないと思うのであるが、それが共感・感動を呼ぶまでのことはなかった。

2009/3/16 @新宿バルト9

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